2008年02月10日
和泉式部日記「三段」
ついに二人は結ばれた
宮からは頻繁に手紙が来ていましたが、女は時々返事を差し上げていました。
淋しさと空しい思いが少しは薄らいできていました。
そんな折にまたしても宮から「二人で親しく語り合えたら、貴方のお気持ちが和むこともあるでしょう、今日の暮れに伺っていいですか」と優しい感じのお手紙が来ました。
でも和泉は「語り合ったとしても、どうしようもないでしょう」と冷たく切り返しの歌を贈りました。
宮は思いがけない強行突破にでました。
人目につかないようにみすぼらしい牛車でおいでになり「このように訪ねて来ました」と
側近に伝言させました。
女はひどく困ったけれど、居留守を使うわけにも行かず、お話だけならと思って妻戸にお招きしました。
宮様は美しく気品に満ち溢れたお姿で、とても魅力的な方でしたので緊張しながらお話をしました。
「月の光がまぶしすぎるので、あなたのいらっしやる御簾の内側に座らせてください、あなたが今までお会いになったような男性たちと同じ振る舞いはいたしませんから」とおっしゃるのです。
「今晩はお話だけでしたよね」などと軽い話であしらっているうちに、夜もだんだんと更けていきました。
とうとう御簾の中に
夜も明けてしまいそうで宮はあせりました。
「はかない夢すら見ることが出来ないで(貴方と結ばれないで)今夜を明かしてしまったら、いったい何を後の思い出話にしたら良いのでしょう」とおっしゃるので、私は「今夜夢を見る(貴方と結ばれる)なんてとんでもないこと」と申し上げました。
すると宮は「自分でもどうかしている、と恐くなるほど貴方が恋しくてたまらないのです」といって御簾の中に滑り込まれたのでした。
その宮の情熱に流されるように、二人は結ばれてしまったのです。
Posted by 太閤錦 at 23:42│Comments(0)│TrackBack(0)